Weingut Martin Prüm

Michael und Frank Prüm von Weingut Martin Prüm
Michaelさん(左)とFrankさん

2024年8月13日(火)
今年もやって来ましたー!ドイツの旅、始まります。マインツを発ち西へ向かう。快晴。アウトバーンの走行は快適。今日の目的地、モーゼル中流域までは1時間30分程の行程だ。途中、道路工事の通行規制に惑わされてアウトバーンの降り口を間違えるトラブルはあったが、大きなロスも無く州道158号線を下っていくと、うわっ!目の前にモーゼル川。毎度のことだけど、体温が上がる。すぐにモーゼル川沿いを走る国道53号線、モーゼルワイン通りに出た。ここまで来れば着いたも同然。数分で、今日の目的地Weingut Martin Prümがあるブラウネベルク村に入った。入るべき通りを見極めながら慎重に車を走らせ、イム・ノイドルフ通りに入ると、Martin Prümと書かれた看板を掲げた石造りの建物が見えた。建物の先はもうモーゼル河畔。川沿いの道に車を停め、ワイナリーの入り口の扉の横にある呼び鈴を押すと、髭を蓄えた男性が満面の笑みで現れた。お約束をしたMichaelさんだ。

Weingut Martin Prüm

ワイン造りを生業にしてきたPrüm家は、1990年、当主のMartinさんが、造ったワインを自ら瓶詰めにして販売を始めた。Weingut Martin Prümのラベルが付いたワインの歴史が始まったのはここからだ。Martinさんと奥様のDorisさんが運営するワイナリーの経営に、その後2人の息子たちが加わった。Frankさんはブドウ栽培とワイン醸造の教育を受けた醸造家。有名な老舗ワイナリーSelbach-Osterの現場責任者を務めながら家業に参画している。Michaelさんは、情報技術や持続可能な農業の知見を活かしワイナリーに貢献。2人のアイディアが原動力となり、ワイナリーは自然農法に大きく舵を切っている。2018年から有機農法に転換し、2021年にはBio認証を取得。その後ビオディナミに取り組み、2023年にはDemeter会員となっている。
さて、Michaelさんに導かれ中に入っていくと、お年を召したご婦人と紳士の皆さんがテーブルを囲んでいる。ワイン片手に楽しそうな会話。いや、この幸福感いっぱいの空間、良いなあ。ご挨拶をしつつ通り過ぎ、さらに奥に行くと、白が基調の明るいキッチンがあるお部屋。大きなダイニングテーブルがあり、そこで試飲をさせてもらうことになった。

Weins aus Weingut Martin Prüm

「さて、どんなワインが好きなのかな?うちは出来る限り自然に従った農法を取り入れており、醸造も出来るだけ人が介入せず、発酵も自然酵母でやっているので、テロワールの違いも楽しめると思うよ」とMichaelさん。トロッケンが好きだと伝えると、ベーシックなリースリングをグラスに注いでくれた。「これは4月のイースターの頃に瓶詰めしたばかりだからね。とてもフレッシュだよ」うん、柑橘系の良い香り。ジューシーで酸が効いていて美味しい。そして確かにフレッシュ。
「次にこのミュラー・トゥルガウを試してみて。もっとトロッケンな味わいだよ」あー、柑橘系の香りにライチのような香りも。確かにトロッケンだけど、凝縮された果実味が柔らかく、優しい味わい。穏やかな苦味があり深みも感じる。美味しい。「このブドウは樹齢50年なんだ。完熟したブドウを手摘みして、ステンレスタンクでブドウの実も丸ごと一緒に6ヶ月発酵させるんだよ」おー、立派なアルテレーベン。しかも全房で6ヶ月の発酵とは面白い。そりゃ深い味がする訳だ。

Keller von Weingut Martin Prüm

「ではリースリングに戻って、ブラウネベルガー・クロスターガルテンのワインをどうぞ。この畑は粘板岩土壌で力強いワインが出来るんだよ」ふむ、柑橘系の良い香り。口に含むと、ドライで凝縮感のある果実味がジューシー。骨格があり、しっかりとした味わい。余韻が長くミネラル感を感じる。ステンレスタンクで熟成しているとのこと。
ふと、熟成を樽でするのかステンレスタンクでするのかはどのように決めているのかなと思い聞いてみた。
「それはFrankが決めているんだよ。次の醸造に備えて樽には水が満たされているんだけど、その味で決めているんだ。あと、ブドウの状況にもよるけどね」
「へえー!毎年樽の水の味で判断するって、よく分かるね」
「ハハ!なかなか難しいと思うけど、Frankには分かるんだよね」
いや、最終的に出来るワインの味わいを想定しながらとは思うが、樽の水の味とブドウの状況で醸造方法を判断していくというのは、とても自然に寄り添っていると思う。

Keller von Weingut Martin Prüm

トロッケンの白ワインを飲んでしまったので、赤ワインをお願いする。シュぺートブルグンダーのトロッケン。うん、赤いベリーの良い香り。スパイスのニュアンスに木の香り。完熟した果実味が美味しく骨格がある。「これは使用2回目のバリックで1年間熟成しているんだ。40年くらい前はこの辺りの赤ワインは全くダメだったんだけどね、今はブドウの生育も良いしワインの品質も上がっているんだ。うちがシュペートブルグンダーの栽培を始めたのは2011年からだよ」いや、このワインもとっても美味しい。むしろ、モーゼルの冷涼な気候は、赤ワイン造りにおいて今後益々強みになっていくと思われる。それにしても、この温暖化、何とかならんものか。
「次にナチュラルワインを飲んでみない?トロッケンだよ」おー、良いね良いね。Michaelさんが注いでくれたのはミュラー・トゥルガウのナチュラルワイン。うわー、しっかりした橙色。これ、正にオレンジワイン。日本のみかんのような柑橘系の香りに酵母の香り。飲んでみると円やかな柔らかい味。意外と後味がスッキリとしている。「これは発酵の最初の2、3週間スキンコンタクトさせているんだよ。それでこの色合いと独特の風味になるんだ。その後バリックで6ヶ月熟成させてるんだ。あと、しっかりと発酵させることもありブドウは早めに収穫しているんだよ」
醸造はそれだけで、後は亜硫酸も含め添加物は一切使用しないとのこと。もちろん自然発酵で無濾過で瓶詰めされる。正に100%自然なワインって訳だ。
そして、今度はリースリングのナチュラルワイン。おー、これも立派な橙色。「こちらも同じように造っているけど、バリックでの熟成は18ヶ月だよ」あー、これもオレンジのような柑橘系の香りに酵母の香りが特徴的。そして、リースリングらしく酸味があり骨格がしっかりとしている。いや、ナチュラルワイン、クセになりそう。

Weins aus Weingut Martin Prüm

と、ここで扉が開き、Frankさんが入ってきた。ありがたいことに、作業の途中で立ち寄ってくれたとのこと。ひとしきりこれまでに試飲したワインのことなどを話すと、トロッケン以外も美味しいよとのアドバイス。Michaelさんがすかさずシュペートブルグンダーのロゼを注いでくれる。「これはファインヘルプだけれど、ほとんどトロッケンだから好きなんじゃないかな」Frankさんが、「12時間のスキンコンタクトでこの色合いになっているよ。この2023年のものはちょっと色が薄いかな」と説明してくれる。綺麗なピンク色。チェリー、ストロベリーの香り。とてもフレッシュでジューシーな味わい。グイグイいけそうだ。
「では、あとは良い畑のリースリングを是非!ブラウネベルガー・ユッファーのファインヘルプをどうぞ」とMichaelさんが注いでくれる。「このワインのヴィンテージの2018年は、ワインにとってパーフェクトな年だったんだよ」とFrankさん。濃い目のイエロー。柑橘系の香りに桃やマンゴーの香り。蜜のような甘いニュアンスも。凝縮した果実味が美味しい。穏やかな苦味がいい感じ。果実味と酸味が尾を引く長い余韻。いや、美味しい。
「次はもう少し甘くなるよ。ブライネベルガー・クロスターガルテンのカビネをどうぞ。残糖分は57.8g/lだよ」これもイエローの外観。柑橘系の香りに甘い砂糖漬けのような香り。ミントの香りに黄色い花の香り。力強さを感じさせる味わい。凝縮した果実味は円やか。酸味が効いており、味わいをまとめている。長い余韻。
「実はね、昨年や一昨年はボトリティス・シネレア菌の発生がひどくてユッファーのブドウからトロッケンのワインを造れなかったんだ」とFrankさん。なるほど。有機農法に徹していると、カビ対策も大変なんだと改めて思う。そして、そのようになったらなったで、状況に合わせて甘口のワインを造る、というのも自然に寄り添ったやり方だ。「あと、ブラウネベルガー・ユッファーのアウスレーゼをどうぞ。残糖分は100g/lだよ」とMichaelさん。うん、柑橘類を砂糖漬けにしたような香り。飲んでみると濃厚な甘い果実味がジューシー。酸味が効いており、後味はすっきりとしている。

Keller von Weingut Martin Prüm

試飲の後、Michaelさんがケラーを案内してくれた。年季が入った木樽やステンレスタンク、バリックなどが機能的に並べられている。整理整頓が行き届いており、丁寧なワイン造りがなされていることを感じ取ることが出来る。自然と向き合い、人はなるべく介入しない。そんな哲学が宿っているように思えた。今日飲んだワインから感じられたのも自然の力だ。人為的なものを感じない、むしろ素朴とも言える味わいは、とても活き活きとしており力強かった。Demeter会員にもなり、自然の力を利用したワイン造りに益々磨きをかけていくこのワイナリーの未来は明るいと思う。そして、このワイナリーの強みは家族の力だ。Martinさん、Dorisさん、Frankさん、Michaelさんに加え、娘さんのLisaさんも経営に参画するこのワイナリー、発展すること間違いなし!

Weingut Martin Prüm

試飲したワイン
2023 Riesling trocken
2022 Müller-Thurgau unfiltriert trocken
2022 Brauneberger Klostergarten Riesling trocken
2020 Spätburgunder Rotwein trocken
2022 Müller-Thurgau Naturwein trocken
2021 Riesling Naturwein trocken
2023 Spätburgunder Rosé
2018 Brauneberger Juffer Riesling feinherb
2023 Brauneberger Klostergarten Riesling Kabinett
2022 Brauneberger Juffer Rieslingg Auslese

畑面積:3.5ha
生産量:20,000本/年
上級畑:Brauneberger Klostergarten、Brauneberger Juffer
土壌:BK/粘板岩・レーム、BJ/青灰色粘板岩・酸化粘土(酸化鉄)
栽培種:50%リースリング、15%シュペートブルグンダー、15%ミュラー・トゥルガウ、5%ケルナー、その他

マーティン・プリュム醸造所ホームページ

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