Weingut Lehnert-Veit
2019年9月8日(日)
モーゼル川中流域の銘醸地、ピースポート。町のほぼ真ん中、この辺りではバーンホーフ通りと名を変える国道53号線から、モーゼル河畔に向かって伸びる道に入っていく。モーゼル川が迫ったところを左折すると、すぐに綺麗なこじんまりしたワインショップが目にとまった。淡いピンクの壁が可愛い感じ。Lehnert-Veitの看板も見える。そういえば、アポ入れのメールの返事に「その日は12時から22時まで開いてるから、何時でもいいわよ」とあった。なるほど。こんな立派なショップがあるんだったら何時でも大丈夫だ。
Lehnert-Veitの歴史は古い。1653年創業、ってはっきり言って想像できない。この辺りは、まだ30年戦争の混乱が残っていたに違いない。その後、ナポレオンに征服されたり、プロイセン王国になったり、2つの世界大戦があったりと、激動の時代を経てきた。その間、10代に渡りワイン経営を続けてきたLehnert家の家族力には、本当に敬意を払うしかない。
店に入ると、白い壁にナチュラルな木製の棚やカウンターで明るい雰囲気。赤、白の様々なワインに、ゼクトやトレスターなどが綺麗に並んでいる。棚を一回りして、カウンターの後ろに立っている男性に声をかけた。あとで知ったが、彼が10代目のPeterさんだった。
「試飲したいんだね。こちらへどうぞ」と、裏手の出口から出て行く。ついて行くと...
「うわ!これ凄い」
予期せぬ景色に圧倒された。眼下に広がる庭園は芝生の緑が鮮やかで、木々の間に日除けの大きなパラソルとテーブルが配置されている。そして目の前には、ゆったり流れるモーゼル川とブドウ畑の大パノラマ。一気に体温が上がった。
庭園に降りて行くPeterさんをあたふたと追いかけて行くと、そこにバーカウンターがあった。
「辛口のリースリングがいいんだよね」と確認し、最初のワインを注いでくれる。まずはベーシックなやつ。おっ!辛いなこりゃ。好み好みと嬉しくなる。次にSchieferと名付けられた村名ワイン。これもいいなあ。やはりしっかり辛口で強い酸味が心地よい。辛口で、酸っぱさを感じるような酸がLehnert-Veitの特徴のようだ。そして、その感覚は次のワインGünterslayで確実となった。
「これ、酸っぱい!そして超辛い!!」
「Günterslayの畑は山の上の方にあって少し涼しいんだ。酸の感じが良いでしょ」
うん。こりゃまじでザールあたりのワインのようだ。
そしてピースポートの代名詞、Goldtröpfchenのワイン。まずはWehrから。これも辛口だが、より柑橘系の果実味がある。それにハーブのようなグリーン系の香り。そして何よりも、ガシッと力強い味わいが美味しい。
「うちはGoldtröpfchenの中でも良い場所にあるからね。こちらもどうぞ」と、Peterさんは”GG”のシールが貼ってあるワインに手を伸ばす。
いや、ありがたやありがたや。PeterさんはHohlweidを注いでくれる。いやー、本当に美味しいなあ。やはりGGの力強さは格別。基本は同じだけど、柑橘系の果実味に加え洋梨というか、アプリコットというか、色々な味わいがする。香辛料のニュアンスやハーブの香りも感じられる。そしてもう一本のGG、Gruft。これも力強い。そして複雑。何だか肉が食べたくなってきた。本当にもう、幸せ。
ところで、リースリングばっかり飲んでいるが、Peterさんはシュペートブルグンダーも精力的に栽培しており、そのワインも高評価を得ている。
決めた。次にモーゼルに来るときには、ここに泊まろう!
試飲したワイン
2018 Riesling trocken
2018 Schiefer Riesling trocken
2018 Günterslay Riesling trocken
2017 Goldtröpfchen ‘Wehr’ Riesling trocken
2017 Goldtröpfchen ‘Hohlweid’ Riesling GG trocken
2016 Goldtröpfchen ‘Gruft’ Riesling GG trocken
畑面積:11.5ha
生産量:60,000本/年
上級畑:Piesporter Goldtröpfchen、Piesporter Falkenberg、Piesporter Günterslay
土壌:暗色粘板岩、段丘堆積物
栽培種:60%リースリング、30%ブルグンダー類、10%シャルドネ、メルロー等