Weingut Steffens-Keß

Herr Harald Steffens von Weingut Steffens-Keß
Haraldさん。ビオの求道者!

2023年8月16日(水)
モーゼル川右岸沿いの国道53号線を上流に向かうと、中流域に差し掛かるところでレイルの街を示す標識が見えた。ハンドルを切り橋を渡ると、そこはもうレイル。河畔沿いの通りに入ると、すぐに目的地のWeingut Steffens-Keßが見えた。モーゼル川と葡萄畑の丘陵に挟まれたこの小さな街は、ブドウ栽培とワイン生産の長い歴史を持つ。多くのワイナリーやレストランがあり、また、ハイキングやサイクリングコース、カヌー体験の環境が整備されている。ワインと休暇を楽しむにはうってつけの場所だ。土手の下、正に川っペリにある駐車場に車を停め、土手の上にあるそのワイナリーに向かう。大きな木組みの建物が印象的。呼び鈴を押すと、お約束をしたHarald Steffensさんが建物の左手から現れた。「ようこそ。待ってたよ」
Weingut Steffens-Keßは、Haraldさんと奥さまのMarita Keßさんが1982年に創業。当初から、化学物質や人工肥料全く利用しない有機農法によるブドウ栽培に取り組んできた。その道のりは、ドイツの有機栽培ワインの発展の歴史とともにある。1985年に創設されたECOVINは、ドイツで唯一のワインに特化した有機生産者団体であるが、Steffens-Keßはその創設メンバーだ。良いワインは良い場所、良い品種、収穫量の制限からという方針のもと、自然の力を取り入れた多様で豊かな土壌作りと厳選した収穫を実践している。4haの畑で栽培するのはリースリングのみ。自然な栽培、自然な醸造の努力を積み重ね、最高のリースリングワインを追求している。

Weingut Steffens-Keß

Haraldさんに連れられ、敷地奥の、緑の葉が生い茂る小振りな建物に入ると、そこは物置き兼作業場といった趣の場所。
「では、ここでテイスティングをしようか。2022年のワインが一番新しいけれど、前の年のも飲んでみる?」
もちろん飲みたいと伝えると、奥の冷蔵庫から数本のボトルを持って来て、木のコンテナの上に並べてくれた。
「うちの葡萄畑は、ワイナリーの目の前、モーゼル川対岸のReiler Goldlayと、隣接するBurger Wendelstück、Burger Hahnenschrittchennの3つ。いずれも粘板岩土壌だけど、それぞれに特徴があるんだよ。まずは2021年のBurger Hahnenschrittchennをどうぞ」
あー、リースリングの良い香り。レモン、ライムといった柑橘系の香りの中に蜜のような甘いニュアンスも感じる。飲んでみると、これ、すごく透明感がある。味わいはジューシー。生き生きとした酸が味をまとめている。
Haraldさんは、同じく2021年のReiler Goldlayを注いでくれる。うん、これもリースリングの良い香り。柑橘系の果実の香りに加え、白い花の香りも。また、スパイスとハーブのニュアンス。そして透明感のある味わい。酸が尾を引く長い余韻の後のミネラル感がいい感じ。いや、美味しい。

Weine von Weingut Steffens-Keß

「2021年は、夏にこれまでにない大雨があったりしてブドウの収穫は少なかったけれど、良いワインが出来たと思うよ。何故だか、ブドウの収穫量が少ないとワインの質が良くなるという法則があるんだ」
へー、ブドウの質を高めるために、敢えてブドウの房を切り落としたりして収穫量を下げることは知っていたが、天候等の影響も含めて少収穫量=高品質ワインの法則が成り立つとは面白い。これ、長年の経験がないと分からないことだ。
「では今年のワイン。まずは2022年のBurger Hahnenschrittchennをどうぞ」
おー、これフレッシュな香り。同じ畑のワインでも、収穫年が違うと印象が変わる。そして、このワインも口に含んだ時の透明感のある味わいが素晴らしい。これこそ、Steffens-Keßのワインの特徴であり、Haraldさんの醸造技術の賜物に違いない。
「とにかく優しく穏やかにワインを造っている。空気圧式のプレス機で優しく圧搾。発酵も、時には冷却したりしながらゆっくりやる。発酵と貯蔵は主に古い木樽で行うけれど、発酵による炭酸ガスやワインの風味が損なわれないよう、清澄や瓶詰めなどの作業もとにかく穏やかに行うんだ。あと、風味を保つため、瓶詰めは早春の寒い時期に行うんだよ」また、酵母は、ハンセヌラやウラヴァムといった野生酵母の悪影響を考慮して、サッカロミセス・セレビシエのみを使っているとのこと。

Mosel Lage Reiler Goldlay
Reiler Goldlay

次は2022年のReiler Goldlay。これもフレッシュ。生き生きとした柑橘系の良い香り。辛口のジューシーな味わいに溶け込んだ酸が心地良い。
「次はBurger Wendelstückのワインをどうぞ。この畑は鉄分が多く、また砂岩も混じっているんだよ」
うん、これも柑橘系の良い香り。味わいはジューシーで、これも流石の透明感。特徴的なのは、優しい味わいで、深みを感じる点だ。そしてミネラル感がある。土壌の特徴が出ているんだなあと思う。
そしてHaraldさんは2022年のReiler Goldlayのカビネを注いでくれる。あー、これ、香り豊か。果実の香りがより豊かで、柑橘系に加え、洋梨や桃の香りも。活き活きとしたフレッシュ感がある。スパイスやハーブのニュアンスも。完熟した果実味に酸味が良く調和している。そしてBurger Hahnenschrittchennのシュペートレーゼ。いや、これも果実の香りが豊か。果実の甘さも感じられる。そしてスパイスのニュアンス。口に含むと、とてもジューシー。完熟感があり、しっかりとした味わい。ピュアな果実感が酸味と相まってとても美味しい。
「2022年はとても乾燥していて、そのストレスに苦しんだ葡萄が多かったんだ。干ばつと太陽からの強い紫外線が原因で、ブドウに苦味物質(フェノール類)が多く蓄積された。このようなブドウでワインを造っても美味しくないので、しっかりと選別をしなければならなかったんだ」

Keller von Weingut Steffens-Keß

そうかー、2021年は大雨で2022年は干ばつ。同じ畑の葡萄でも毎年キャラクターが違ってくる。ブドウの生育過程をつぶさに見ているからこそ適切に収穫が出来、適切な醸造を行うことが出来るということだ。美味しいワインを造り続けるワイナリーの仕事には、心から敬意を表さねばと思う。
「では最後に、Reiler Goldlayのシュペートレーゼをどうぞ」
おー、これも果実の豊かな香り。ハーブのミュアンスも。そして濃縮された果実味。活き活きとした力強さがある。また、ミネラル感を感じる。いや、幸せ。
試飲の後、Haraldさんがケラーを見せてくれた。こここそが、ワインが優しく穏やかに造られる現場なんだなぁと、ある種の感慨に耽る。それにしても、Haraldさんの自然に拘ったワイン造りにかける情熱は凄い。4haの畑で出来ることを徹底的にやるその真摯な姿勢に感銘を受けた。その奮闘ぶりは、ワイナリーのホームページに掲載されているブログ「Steffens-Keßの絵物語」で垣間見ることができる。これ、ワイナリーの日々が克明に描かれていて、ワイン造りに関心がある人は必見だ。HaraldさんとMaritaさんのワイン造りの道がどこまで到達するのか、これからもずっと見ていかねば!

Weingut Steffens-Keß

試飲したワイン
2021 Burger Hahnenschrittchenn Riesling trocken
2021 Reiler Goldlay Riesling trocken
2022 Burger Hahnenschrittchenn Riesling trocken
2022 Reiler Goldlay Riesling trocken
2022 Burger Wendelstück Riesling Kabinett trocken
2022 Reiler Goldlay Riesling Kabinett trocken
2022 Burger Hahnenschrittchenn Riesling Spätlese trocken
2022 Reiler Goldlay Riesling Spätlese trocken

畑面積:4ha
生産量: −
上級畑:Reiler Goldlay、Burger Wendelstück、Burger Hahnenschrittchenn
土壌:RG/灰色粘板岩、BW/粘板岩・灰色岩(砂岩)・赤土、BH/粘板岩・風化粘板岩
栽培種:100%リースリング
BIO

シュテファン=ケス醸造所ホームページ

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