Weingut Ökonomierat Rebholz
2019年9月12日(木)
ハインフェルドからドイツワイン街道(Weinstraße)を南下、ジーベルディンゲンを目指す。そこには、今回のワイナリー巡りの最後の訪問地、Ökonomierat Rebholzがある。ドイツに行くことになったら必ず訪れようと思っていた場所だ。ベルリンに住んでいた2002年、ドイツワインに興味が出てきたこともあったのか、何となく本屋からゴーミョーを買ってきた。栄えある今年の醸造家(Winzer des Jahres)として、巻頭にバーンと写真が掲載されていたのがÖkonomierat Rebholzの当主、Hansjörgさんだった。その後、ドイツワインに関する情報をちょいちょい見ていたのだが、Ökonomierat RebholzのワインやHansjörgさんの記事をよく目にした。常に高評価。そして、ドイツワインについて勉強をして知ることになったFünf Freunde。この1991年発足の創造的な若手醸造家グループのメンバーにも、Hansjörgさんの名前があった。今、そのワイナリーに向かってるんだと思うと、マジかーって感じで妙に高揚してしまう。
いよいよジーベルディンゲン村に入る。道はそのままでWeinstraße。道の両側に家々が並ぶ。教会を通り過ぎた先を右折すると、すぐに目的のワイナリーはあるはずだ。この辺りかなと、目についた車道の駐車スペースに車を停める。車を降り、建物の番地を確認しながら歩く。本当にドキドキするわ。そして、緑の蔦が生い茂る建物の入り口の壁に、Weingut Ökonomierat Rebholzの標識を発見。うわー、ここだよと中を覗く。綺麗な石畳が続き、入り口を抜けた先がちょっとした広場的なスペースになっている。そして、レンガ造りの建物。よし!っと歩きだして入り口を抜けると、右手に大きなパラソルがあり、その下のテーブルセットに座ってスマホを見ている人がいる。おおっ!あれHansjörgさんじゃん。間違いない。メディアで何度も見たことがあるその人がそこにいた。近づいていって挨拶をする。Hansjörgさんは、穏やかな笑顔で「待ってたよ」と応えてくれた。
Rebholz家は、30年戦争の真っ只中、1632年からワイン造りに携わってきた。そもそも、Rebe(ブドウ)+Holz(木)というファミリーネームからして、この一族のワインとの関わりを象徴している。Rebholz家のワインが特別なものになっていく道のりは、Hansjörgさんの祖父、Eduardさんのチャレンジから始まった。第2次世界大戦後に両親からワイナリーを引き継いだEduardさんは、人工的に甘くした当時のワインが全く気に入らなかったとのこと。息子のHansさん(Hansjörgさんのお父さん)とともに研究を重ね、気候や土壌を活かしたブドウ栽培、砂糖や人工甘味料を加えたり発酵を止めたりすることのない醸造を実践した。EduardさんとHansさんは、この”Naturwein(自然ワイン)”の考えを追求し、品質を高めていく。Eduardさんが打ち立てた哲学はHansさんに継承され、Hansさんが幼いHansjörgさんを残し早世した後も、Hansさんの奥様のChristineさんがしっかりと守った。そして、その哲学とワイン造りは、1990年代半ばにHansjörgさんと奥様のBirgitさんに引き継がれた。Hansjörgさんはさらに探求を進め、2005年にはビオディナミ農法に移行する。その自然ワインは、今や世界的に高い評価を得ている。
Hansjörgさんに案内され、レンガ造りの建物に入っていく。入ってすぐのステップを上がると、白く塗られた壁に焦げ茶色のフローリングの床。窓からたくさんの光が入り開放感のある試飲スペースになっていた。シンプルなデザインの木製の長机と黒い椅子が並んでいる。その奥は、ガラスの扉で仕切られた事務スペースのようだ。壁には、縦長の枠に収めた土壌のレプリカや絵画が飾ってあり、白い壁と良いコントラストをなしている。
「さて、どのワインを試したい?」Hansjörgさんは椅子に腰掛けるとそう言って、ワインリストを説明してくれた。リースリングに加え、ブルグンダー類、ムスカテラーなどバラエティに富んだ白ワインと、シュペートブルグンダーの赤ワイン。中でも、リースリングの充実ぶりに目を見張った。やはりここは、リースリングをしっかりと試飲せねば。
まずはグーツワインから。Ökonomieratと名付けられたワイン。うん、柑橘系の香りにハーブのノート。おお!辛口。そしてレモンのような酸っぱさ。そしてミネラル感。これ、好きなタイプ。なんだか自然な感じがする。
「これはRebholzのスタイル、”Typ Rebholz”をよく表しているワインなんだ。完熟したブドウをしっかり発酵させており、あとは何も加えていないので、ブドウと土壌のキャラクターが感じられるんじゃないかな」
なるほど。Typ Rebholz、すんごく良いわ。
「リースリングは土壌の特徴をよく現すんだ」と、Hansjörgさんは、Buntsandstein(雑色砂岩)のリースリングを注いでくれる。香辛料の香りが特徴的。洋ナシの香りに柑橘系の香り。口に含むと、これも辛口。しっかりとした果実味でフルーティだ。そして塩味を伴ったミネラル感。いや、美味い。そして、Rotliegenden(赤色粘板岩)のリースリング。これ、柑橘系やリンゴ、桃といった果実の香りとともに、お茶というか干し草というか、特徴的なハーブの香りがする。飲んでみると、Buntsandsteinとは全く違った味わい。なんというか、より骨格がしっかりとしていて、スモーキーな感じがする。
Hansjörgさんは、こちらの感想をニコニコと聞いている。そして立ち上がると、土壌の模型を持ってきた。水捌けや成分など、BuntsandsteinとRotliegendenの違いを丁寧に説明してくれる。ホント、ありがたい。そして、これはどうかなと、Muschelkalk(貝殻石灰岩)のリースリングを注いでくれる。おー、また違う!柑橘系の香りもするが、マンゴーやトロピカルフルーツのような黄色い果物の香りが強い。しっかりとした味わいで、力強いが、より丸い感じがする。溶け込んだ酸が尾を引きミネラルを感じられる余韻が素晴らしい。Hansjörgさんは、Muschelkalkの土壌模型も持ってきて説明してくれた。いや、それぞれに本当にキャラクターがあり、面白い。
「今度はこれを。Buntsandsteinを含んだ土壌のワインだよ」と注いでくれたのは何とGGワインのGanzHorn。いや、嬉しいなあ。柑橘系の香りに花の香り。塩っぽいミネラルのノートが特徴的。香辛料のようなニュアンスも。力強くも繊細な味わい。活気がある。完熟感を感じる果実味が酸とともにいつまでも尾を引く。
そして、Hansjörgさんはもう一つのGGワイン、Im Sonnenscheinを注いでくれる。こちらはMuschelkalkを多く含んだ土壌とのこと。うん、アプリコットのような黄色い果物の香りに花の香り。蜂蜜のようなニュアンスも。そして何というか特徴的な香り。「これ、スモーキーじゃない?」とHansjörgさん。確かにー!香辛料というかハーブというか特徴的な香りと思ったが、これ煙だわ。力強い骨格のある味わい。熟した果実味に溶けた酸の刺激が真っ直ぐに入ってくる。苦味というか塩味というか、よく味わうと複雑な味わい。そして、長い余韻にミネラル感。
「折角なので甘口も試していって」と、RotliegendenのKabinettとGanzHornのSpätlese。いずれも甘さと酸味のバランスが素晴らしい。Rotliegendenは、やはり特徴的なハーブの香りがする。GanzHornはより濃厚な感じ。酸味に加えスパイシーな味わいが甘さと調和している。そしてミネラル感。いや、リースリング堪能だわ。
「赤も飲んでみる?」とHansjörgさん。いや、もう頷くしかない。注いでくれたのはMuschelkalkのシュペートブルグンダー。チェリー、ベリーの香りが良い感じでバリックからくる樽香と調和している。そして香辛料の香り。とても柔らかな口当たりで、優しくも熟した果実味が滑らかに拡がる。溶け込んだタンニンが心地良い。Hansjörgさんは、「ミネラルも感じられるんじゃないかな?熟成は新品と中古のバリックで2年間行なっているんだ」と説明してくれる。
いやー、幸せ。憧れのRebholzの、そしてHansjörgさんのワインを超絶堪能。メールでのアポ取りに対応してくれた奥様のBirgitさんにも大感謝せねば。
ところで、Ökonomierat Rebholzでは、Typ Rebholzの継承にも抜かりがない。HansjörgさんとBirgitさんの双子の息子たち、HansさんとValentinさんは、それぞれガイゼンハイムとノイシュタットで学問を修め、既に両親のワイナリーの経営に参画している。Eduardさんから始まったRebholz-Weg(Rebholzの道)は、まだまだ続く!
試飲したワイン
2018 Riesling “Ökonomierat” trocken
2018 Riesling vom Buntsandstein trocken
2018 Riesling vom Rotliegenden trocken
2018 Riesling vom Muschelkalk trocken
2017 “GanzHorn” Im Sonnenschein Riesling GG
2017 Im Sonnenschein Riesling GG
2017 Riesling Kabinett vom Rotliegenden
2016 “GanzHorn” Im Sonnenschein Riesling Spätlese
2015 <<R>> Siebeldinger Spätburgunder vom Muschelkalk trocken
畑面積:24.5ha
生産量:120,000本/年
上級畑:Birkweiler Kastanienbusch und Mandelberg、Siebeldinger im Sonnenschein、GanzHorn Im Sonnenschein、Albersweiler Latt、Frankweiler Biengarten
土壌:BK/赤色粘板岩・雑色砂岩・石灰岩・粘土、BM/貝殻石灰岩・レスレーム、SS/貝殻石灰岩・レスレーム、GH/雑色砂岩・砂利・レーム、AL/風化物を含む粘土岩、FB/貝殻石灰岩・レスレーム
栽培種:40%リースリング、21%シュペートブルグンダー、14%ヴァイスブルグンダー、10%シャルドネ、5%グラウブルグンダー、10%その他
BIO(ビオディナミ)