Weingut Josef Bernard-Kieren
2024年8月13日(火)
モーゼル川を左手に眺めながら、モーゼル川沿いの国道53号線を川下に向かって車を走らせる。活気のあるベルンカステル=クースを過ぎて5分程、ちょうどグラーハ村の街並みに差し掛かるところを右に曲がる。と、すぐに国道53号線のすぐ横を並行に走るベルンカステラー通りに突き当たり、そこに目指すWeingut Josef Bernard-Kierenがあった。綺麗な石造りの建物。その前には、綺麗に手入れされた庭がある。緑が眩しい。バショウの木、ピンクや黄色い花が咲いている木、黄色い実をつけた木などがあり賑やかな感じ。そこにテーブルや椅子、パラソルが設置されており、心地良さそうな空間になっている。それにしても良い立地。ここ、モーゼル川沿いの道から入ってすぐ。つまり、モーゼル川は目の前で、遮るものは何もない。この前庭のテーブルに座ると、モーゼル川を眺めながらくつろぐことが出来る。さて、お店の前に車を停めようとしていたら、お店から男性が出てきて誘導してくれた。ご挨拶をすると、お約束をしたMartinさんだった。
Weingut Josef Bernard-Kierenは、1950年創業。Martinさんは、5代目であるお父さんのJosef Bernardさんと共同で当主を務めている。お母さんのJuttaさんも経営に参画しており、典型的な家族経営のワイナリーだ。Bernard家のワイン造りの基本は、品質の追求。そのために、環境に優しいブドウ栽培を行い、収穫は手摘み。基本的に遅摘みであり、また、熟度に応じて数段階に分けて選別を行っている。醸造は優しい圧搾や、ゆっくりと冷却しながら発酵を行うなど、伝統的な技術と最新の技術を駆使しているとのこと。そのワインは高く評価されており、これまでに多くの賞を受賞している。
Martinさんに案内されお店の中に入ると、そこは白が基調の明るいレストラン。壁の一部が赤色に塗られておりモダンな感じ。壁には、これまでに受賞したメダルなどが飾られている。
テーブルに着席しワインリストを見ると、赤字でNeu(Newのドイツ語)の文字が添えられたワインが一つある。シュペートブルグンダーのブラン・ド・ノワール。へー、これ新しくラインアップされたんだ。折角なので、まずはこれをお願いした。「うちはリースリング主体なんだけど、最近はシュペートブルグンダーやヴァイスブルグンダーを増やしているんだよ」とMartinさん。うん、チェリーやストロベリーの香りが良い。ドライでフレッシュな味わい。
そしていよいよリースリング。トロッケンが好きだと伝えると、まずはグラーハー・ドムプロストのカビネを注いでくれた。柑橘系の良い香り。口に含むと、おー、ジューシー。果実の甘さを感じる。そしてキリッとした酸。美味しい。「グラーハー・ドムプロストはちょうどウチの裏手の山にあるんだよ。南向きで日当たりが良い粘板岩土壌で、力強いワインが出来るんだ」なるほど。そう言えば、以前訪れたWeingut Kees-KierenのErnst-Josefさんもドムプロスト推しだったなと思い出す。
そして、次にグラーハー・ヒンメルライヒのカビネを注いでくれる。「こちらも良い畑だよ。ヒンメルライヒはドムプロストを囲むように広がっているんだけど、このブドウはちょうどドムプロストの上方の区画なんだ」あー、これも柑橘系の良い香り。アプリコットの香りも。ハーブ、スパイスのニュアンス。先程のドムプロストよりも柔らかな味わい。次は2023年のグラーハー・ドムプロストのシュペートレーゼ。うん、柑橘系、お花の香り。火打石やミネラルのトーン。飲んでみると、これ力強い。果実の凝縮感を感じる。ドライで好きな感じ。「ハハ!トロッケンが好きなんだね。これは4月に瓶詰めをしたばかりなんだ」
「こちらもドライでしっかりとしており美味しいと思うよ」と、Martinさんが注いでくれたのはグラーハー・ヒンメルライヒのシュペートレーゼ。あー、これも力強い。柑橘系の香りにアプリコットの香り。ハーブのニュアンス。凝縮した果実味に繊細な酸味。そして、グラーハー・ヒンメルライヒのGG(Großes Gewächs)。あー、これ香りが強い。柑橘系に桃の香り。そして白い花。スパイスやハーブのニュアンス。うん、いい香り。口に含むととても滑らかな口当たり。凝縮感のある果実味はジューシーで濃い感じ。そして長い余韻。いや、美味しい。
ひとしきりトロッケンのリースリングをいただいたので、赤ワインをお願いする。グラーハー・ヒンメルライヒのシュペートブルグンダー。チェリー、ラズベリーの香り。辛口で良い感じの味わい。気軽に飲むのにうってつけのワインだ。「このブドウの2022年はシュペーとブルグンダーには良い年だったんだ。しっかり熟してるでしょ」とMartinさん。そして最後に、折角なのでリースリングのハルプトロッケンをお願いした。うん、柑橘系の良い香り。桃の香りにハーブのニュアンス。あー、これ酸味と甘みのバランスがとっても良い。凝縮された果実味がジューシー。いつまでも飲んでいたくなるタイプのワインだ。
ここまで飲んできて思うのは、何れのワインもジューシーな果実味とフレッシュな酸があり、とても活き活きとしているということだ。ブドウの良さを上手くワインに結実させていると思う。これは、永年Josefさんが培ってきた匠の技によるところが大きいと思うが、この技が、しっかりとMartinさんに伝承されていることが感じられた。きっと、創業以来、この技の伝承がしっかりきっちりと行われているんだろうな。そしてこの事が、Weingut Josef Bernard-Kierenの強みかなと思う。Josefさん、Juttaさん、Martinさんの家族の力で、伝統を守りつつ更なる発展を遂げてもらいたい!
試飲したワイン
2023 Blanc de Noir Graacher Himmelreich
2021 Riesling Kabinett trocken Graacher Domprost
2022 Riesling Kabinett trocken Graacher Himmelreich
2023 Riesling Spätlese trocken Graacher Domprost
2022 Riesling Spätlese trocken Graacher Himmelreich
2022 Riesling Auslese trocken Großes Gewächs Graacher Himmelreich
2022 Spätburgunder Rotwein trocken Graacher Himmelreich
2023 Riesling Spätlese Halbtrocken Graacher Domprost
畑面積:4ha
生産量:35,000本/年
上級畑:Graacher Himmelreich、Graacher Domprost
土壌:GH/青灰色粘板岩・風化粘板岩、GD/青灰色粘板岩・風化粘板岩
栽培種:75%リースリング、15%シュペートブルグンダー、10%ヴァイスブルグンダー