Weingut Dillmann
2023年8月18日(金)
Weingut Dillmannに興味を持ったのは、ワインの評価が高かったこともあるが、そのポップなラベルが気になったからだ。女の人が走っているような絵にクールなロゴでワイナリー名が記されている。それで、とりあえずホームページを訪ねてみるとぶっ飛んだ。山高帽を被ったDillmann兄弟がバーンとトップページを飾っている。あまりの迫力でびっくりしたが、ホームページのデザインは秀逸。クールでお洒落。これは行ってみるしかない!と思った次第。
さて、Weingut Dillmannはガイゼンハイムの市街地を抜けたところ、上級畑のガイゼンハイマー・ローテンブルクとガイゼンハイマー・クラウザーヴェグに囲まれたところにある。ここから先に行くと、景色はもう見渡す限り一面のブドウ畑。そんな訳で、畑の中にあるコンクリート打ちっぱなしのシンプル、かつクールな外観のワイナリーを見つけるのは簡単だった。
車を停め入り口から入っていくと、お昼休憩中のスタッフが食事をしていた。「ハロー、Mariusさんにアポイントとってるんだけど」と伝えると、奥の方に呼びに行ってくれた。それにしても、このワイナリー内装も超クール!コンクリート打ちっぱなしの壁にシンプルでスタイリッシュな調度品。あちこちに写真や絵画、ポップなロゴが書かれたパネルが飾られている。そのパネルには、「可愛いだけじゃダメ。ワインを飲めないと」といった言葉が並んでいる。そして、何故かサッカーのテーブルゲーム。これがまたワイナリーの雰囲気に合っていて、しっくりと馴染んでいる。天井には三角形の布が張り巡らされ、センスの良い電球の照明も良い感じ。色々な要素があるが、全体がとても良い雰囲気でまとまっており、なんだかとても居心地が良い。しばらくすると、Mariusさんが現れた。「やあ、お待たせ!ちょうど作業を終えるところだったんだ」
Weingut Dillmannは、Mariusさんのお父さんとお母さんである、KarloさんとAnnetteさんが1980年に設立した。 ブドウ畑を購入し、副業としてワインを醸造したのが始まりだったとのこと。その後、KarloさんとAnnetteさんは、ガイゼンハイマー・クラウザーヴェグやリューデスハイマー・ベルク・ロットランドなどの一流の畑に栽培区画を獲得していった。そして2014年、2代目となるMariusさんとMarcelさんの兄弟がワイナリー経営に参画。これを機に、ワイナリーが家族の専業の仕事となった。それからは、家族一丸となってワインの高品質化に取り組んでおり、実際に、その評価は年々高まっている。MarcelさんとKarloさんがブドウ栽培と醸造を担当、Mariusさんがマーケティングとセールスを担当、Annetteさんが運営管理を担当しているとのこと。
さて、Mariusさんは、我々をバーカウンターに案内してくれた。「何から飲む?」
リースリングの辛口をお願いすると、グーツワインのアルテ・レーベンを注いでくれた。うん、柑橘系の良い香り。レモン、ライム、青リンゴ。フレッシュで生き生きとした果実味。とってもフルーティー。酸も活気があり、ミネラル感を感じる。「これは樹齢35年のブドウだよ。残糖分は3グラム」いや、グイグイ行けそうなワインだ。それにしても、これ、7.5ユーロ。この値段でアルテレーベンでしかも美味しいって、凄すぎ。
「ちょっと面白いワインなんだけど、これもトロッケンで美味しいと思うよ。同じガイゼンハイムのWeingut Georgeと一緒に造ってるんだ」と、注いでくれたのはタウシュゲシャフト(日本語に訳すと「コラボ商品」)というワイン。おー、柑橘系の香りが弾けている。白い花やハーブの香り。味わいはジューシーで、とてもフレッシュ。生き生きとしている。「うちのMarcelとWeingut GeorgeのJensは10年来の仲良しで、お互いのワイナリーは色々な面で協力しているんだ。このワインは、その協力関係の証なのさ」確かにこれ、面白い。というか、複数のワイナリーのコラボ作品なんて、聞いたことがない。型破りな取組みだけど、ワイン造りのノウハウやコツを共有し発展させるのに、こんなに良いやり方はない。ドイツワインの未来にとって、とても重要な試みだと思う。
「では、ラーゲンワインに行こうか」と、Mariusさんが注いでくれたのはガイゼンハイマー・クラウザーヴェグのリースリング。うん、柑橘系の良い香り。レモン、ライム、グレープフルーツなど。凝縮した果実味が滑らかに口内に拡がる。とてもジューシー。穏やかな苦味が深みを与えている。そして、生き生きとした酸が全体の味わいをまとめている。
「ラーゲンワインとレゼルブワインは、テロワールの特徴やブドウの持つ個性を引き出すために自然発酵をしているんだ。これは澱と一緒に6ヶ月の熟成だよ」なるほど。複雑性があり、深みを感じたのはそのような醸造からくるんだな。そして次はヴィンケラー・ハーゼンシュプルングのリースリング。あー、これ香りが立ってる。レモン、ライムに青リンゴ。白い花。ミント、草のようなニュアンス。とてもジューシーで生き生きとしている。ヨード、ミネラルの味わい。力強い酸が骨格を作っている。長い余韻。いや、美味しい。
「折角なので、レゼルブワインも飲んでみて。これはガイゼンハイマー・クラウザーヴェグのリースリング。1年間バリックで澱と一緒に熟成させ、2年間瓶で熟成しているんだ」うん、良い香り。グレープフルーツ、桃、マンゴーなど、熟した果実の香り。砂糖漬けのような甘いニュアンス。ハーブ、紅茶の香り。木の香りにスパイスのニュアンス。なんだか、深みがある。飲んでみると、おー、力強い。ボリューム感がある。凝縮した果実味がジューシー。溶け込んだ酸が味わいをまとめている。長い余韻。いやー、とっても美味しい。「そりゃそうだ!うちで一番良いやつだからね」
「これもリースリングのトロッケンなので飲んでみなよ」とMariusさんが注いでくれたのは、これまでとはちょっと違うワイン。うわ、これオレンジワインだ。「はは!これはナチュラルワインさ。といってもうちのワインはみんなナチュラルなんだけどね」香りを嗅ぐと、これまでとは全くの別物。柑橘系の香りもドライフルーツのような濃縮感がある。そして酵母の香り。花やハーブの重層的な香り。ドライな味わいは果実味にコクやミネラル感が相まって複雑だが、全体としてよく調和している。しっかりした酸が骨格を作っている。そして長い余韻。「これは2、3週間ロングコンタクトスキンで発酵させ、バリックで澱と一緒に10ヶ月熟成させてるんだ。もちろん何も加えていなくて無濾過だよ」
リースリングの辛口を制覇したところで、赤も飲みたくなった。レゼルブワインからガイゼンハイマー・クラウザーヴェグのシュペートブルグンダーをお願いした。うん、果実の香りに樽からくる木やローストした香りが相まって良い感じ。チェリー、ブルーベリー、カシスの香り。スパイス、タバコ、紅茶。凝縮した果実味が力強く、ジューシー。滑らかなタンニン。酸が味を引き締める。「これは2年間バリックで熟成、1年間ボトルで熟成したんだ」いや、飲むほどに深みを感じる。あと数年してから飲むと、また違う味わいで美味しくなりそう。
「レゼルブワインのシュペートブルグンダーがあと1本あるので飲んでいきなよ。これはアスマンハイザー・ホレンベルクのワインだよ。傾斜がきつい粘板岩土壌の畑で、とても力強いワインができるんだ」おー、これ、様々な香りがする。チェリー、ブルーベリー、カシスの香りに、丁子、甘草。森の下草、木の香り。濃縮した果実味が力強い。きめ細かなタンニン。存在感のある酸が骨格を作る。長い余韻。「時間とともに香りも出てくるよ」確かに、グラスに注がれてから少し経つと香りが開いてくるのがわかる。いや、幸せ。
「ケラーを見てみない?」とのMariusさんのお誘いにうんうんと頷き、案内してもらう。整理整頓が行き届いたケラーは、クリーンで美味しいワインが出来そうな感じ。そして、ケラーから戻ってきたところで、興味深い写真を発見。Mariusさん、Marcelさん、Karloさんの3人が、ワイナリーのシンボルマークである、あの走る女性のタトゥーを見せている写真だ。
「これ、凄いね!みんなこのマークのタトゥー入れてるんだ」
「はは!このマーク、良いでしょ。これはね、お母さんが大好きな絵なんだ。それをワイナリーのシンボルマークにしたのさ。その絵が飾ってあるので、見てみなよ」
と、先ほど試飲をしたバーカウンターのところに戻ってみると、あったあった。確かにこの絵、ここのマークだ。オリジナルの絵は、女性の表情が読み取れ、より躍動感を感じる。それにしても、お母さんが好きな絵をシンボルマークにし、みんなでそのタトゥーを入れるなんて、Annetteさんこそ、このワイナリーのゴッド・マザーに違いない。
ワイナリーに飾られている写真には、Dillmann家の家族写真も多い。それらを見て感じるのは、この一家、とても仲が良いということだ。これ、家族経営の基本で、それだけでワイナリーの未来は約束されたようなものだ。それに加え、Dillmann兄弟はワインの品質向上のための新しい取組を、とても貪欲に導入している。有機栽培への転換もその一つで、まもなく認証される見込みとのこと。意欲的で超クールな感覚の兄弟を中心に、このワイナリーがどのように発展していくのか、本当に見逃せない!
試飲したワイン
2022 ALTE REBEN Riesling trocken
2021 Tauschgeschäft Riesling trocken
2021 KLÄUSERWEG Riesling trocken Geisenheimer Kläuserweg
2021 HASENSPRUNG Riesling trocken Winkeler Hasensprung
2020 RÉSERVE Riesling trocken Geisenheimer Kläuserweg
2021 RAINER STOFF Riesling trocken naturtrüb
2020 RÉSERVE KLÄUSERWEG Spätburgunder trocken Geisenheimer Kläuserweg
2020 RÉSERVE HÖLLENBERG Spätburgunder trocken Assmannshäuser Höllenberg
畑面積:14ha
生産量:110,000本/年
上級畑:Rüdesheimer Berg Rottland、Geisenheimer Rothenberg、Geisenheimer Kläuserweg、Winkeler Hasensprung、Assmannshäuser Höllenberg
土壌:RBR/粘板岩・珪岩・砂利・レス、GR/酸化粘土(酸化鉄)・粘板岩・珪岩、GK/石灰質レスレーム・泥灰土、WH/黄土、AH/粘板岩・レスレーム・石英斑岩
栽培種:70%リースリング、20%シュペートブルグンダー、10%その他(ソーヴィニヨン・ブラン、ゲルバー・ムスカテラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー等)