Weingut VOLS

Herr Helmut Plunien von Weingut VOLS
Helmutさん

2023年8月17日(木)
トリアーからモーゼル川沿いの道を上流方向に車を走らせると、程なくコンツ村。ここでザール川がモーゼルに流れ込んでいる。ザール川にかかる橋を渡ってすぐに左折し、ザール川の上流方向に向かうと、10分程でアイル村に入る。グーグルマップを確認しながら慎重に車を進め、村の奥の方に入っていくと、あった。半分ほどが緑に覆われた建物の入り口横の看板にVOLSの文字。その先の道端に車を停めていると、男の人がやって来て、「やあ、君たち日本から来たんだろ?」と、笑顔で語りかけてくる。お約束をしたHelmut Plunienさんだった。
Helmutさんの実家は、アイル村に程近いザール川沿いの村、ヴィルティンゲン。ここで、Plunien家は何世代にも渡りブドウを栽培してきた。Helmutさんは、醸造家としての訓練と教育を受けた後、大きなワイナリーで経験を積んできた。特に、フランケン地域の代表的なワイナリーBürgerspitalに長く勤務し、経営責任者兼ケラーマイスターを務めた。Helmutさんは、この経験によりワイン造りに対する正統な哲学「世界最高のワインは、素晴らしい畑、高品質のブドウ、そして最大限の努力によってのみ生み出される」を身につけることが出来たそうだ。2007年に、実家に近いトリアーにあるBischöfliche Weingüterの経営責任者に転じると、その仕事の傍ら、ご両親が栽培するブドウでワインを醸造するようになった。新しいワイナリーの誕生だ。畑はヴィルティンガー・ブラウンフェルスに一族が所有していた数区画。そのうちひとつの区画は、ブラウンフェルスの中でも最良の区画とされ、VOLSと呼ばれていた。これを由来とし、ワイナリーの名前が「VOLS」とされたとのこと。そして2009年、Helmutさんはご両親から畑とワイナリーを引き継いだ。2010年には、廃業していたアイルのワイナリーAltenhofenの施設と畑を引き継ぎ、現在のワイナリーの基盤が出来上がった。

Weingut VOLS

さて、Helmutさんがヴィノテークに案内してくれると、そこはアンティークな調度品が置かれ、昔の農耕具や絵が飾られたクラシックな雰囲気。テーブルに腰掛けると、まずはゼクトをお願いした。すると、「ロゼもあるけれどどうする?どちらもシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエのキュヴェだよ」とHelmutさん。ふとワインリストに目をやると、ロゼのゼクトのところに「トップ10 Gault Millau」の文字。思わずロゼをお願いした。うーん、良い香り。瓶内2次発酵特有の酵母の香りを伴った華やかな香りがする。味わいはフルーティーで辛口。きめ細やかな泡が心地良い。いや、これ、超美味しい。2017年に瓶詰めされたものとのこと。
次はリースリングの辛口をお願いした。まずはグーツワインのザール・リースリング。うん、柑橘系の良い香り。花の香りやハーブのニュアンスも。飲んでみると、骨格のあるしっかりとした果実味。透明感が感じられるスッキリとしたフィニッシュ。いや、美味しい。酵母の香りも感じたので澱の処理を聞いたところ、「これはずっと酵母と一緒に貯蔵しているんだ。濾過もしていない。最後の瓶詰めの時には澱を取り除くけどね」とのこと。なるほど。自然酵母で発酵させ、そのまま静かに置いておくやり方だと理解する。「次はオルツワイン。ヴィルティンゲンの畑のリースリングをどうぞ。土壌は赤色粘板岩だよ」と、次のワインが注がれる。これも良い香り。柑橘、アプリコット、リンゴに白い花。そしてハーブのニュアンス。しっかりとした果実味は透明感のあるフレッシュな味わいで、ミネラル感を感じる。完熟感があるのにアルコール度数が11%と低めになっているせいか、全体として優しい印象を受ける。「ブドウは最高の熟度で遅摘みしているからね」とHelmutさん。

Herr Helmut Plunien von Weingut VOLS

次に注いでくれたのは、なんとGG(Großes Gewächs)!「これはアイルの畑クップのワインだよ。青色と灰色の粘板岩土壌なんだ。このブドウは樹齢50年以上のアルテレーベンで、厳選したブドウを使っているんだ。手摘みで2、3回に分けて収穫を行なっているんだよ」なるほど。いや、これは心して飲まねば。あー、柑橘系のいい香り。加えてリンゴに桃。スパイスのニュアンス。完熟した果実味。溶け込んだ酸がとても良く調和している。そしてミネラル感。いや、美味しい。そして、次のワインもGG。「これはヴィルティンゲンの畑シュランゲングラーベンのリースリング。1920年に植えられたブドウで収穫年が2020年だからちょうど100歳なんだ」えー!アルテレーベンっていうだけでも貴重なのに、100年モノってのは滅多にお目にかかれない。もしかしたら初めてかも。それにしても、シュランゲン(「ヘビ」の意)って、ヘビがいるのかと聞いたら、笑いながらヘビはいないとのお答え。おー、これもまた良い香り。柑橘系にアプリコット、リンゴ。鼻に抜けるハーブの香りが特徴的。口に含むとジューシーで濃厚、そして透明感のある果実味。活き活きとしている。酸が尾を引く長い余韻に感じられるミネラル感が心地良い。いや、本当に幸せ。

Weingut VOLS

「辛口のやつは大体飲んだから、ファインヘルプも飲んでみる?」うんうんと頷くと、シュランゲングラーベンの100年ブドウで造ったカビネを注いでくれた。うん、フルーティーな香り。そして完熟した果実味が活き活きとしている。そして酸が全体をスッキリとまとめている。すると、ファインヘルプついでにと、最初に飲んだザール・リースリングのファインヘルプを注いでくれる。いや、これグーツワインだけれどやっぱり美味しい。とてもジューシーな果実味が活き活きとした酸と相まって良い感じ。ファインヘルプならではの飲みやすさもあり、いつまでも飲んでいられそう。すると、Helmutさんは「ファインヘルプも美味しいだろ?」と、ウィルティンガー・リースリングのカビネを注いでくれる。先ほど飲んだトロッケンと同じで赤色粘板岩の土壌とのこと。これもフルーティー。飲んでみると、熟した果実味がとても軽やか。残糖の甘みでワインの印象も変わってくる。そして、次はアイラー・リースリングのカビネ。いや、怒涛のファインヘルプ攻め。これもフルーティーでジューシー。甘いけれど、酸がしっかり効いていてフレッシュ感がある。酸は10グラム/リットルとのこと。「せっかくなので甘いのも飲んでみて」と2010年のアウスレーゼ。おー、長年熟成したと分かる特徴的な香り。タールのような香りもする。飲んでみると、うん、柑橘系の果実味に蜜のような甘さ。溶け込んだ酸がスッキリとした後味を作る。いや、美味しい。
これで終わりかなと思っていたら、「カベルネ・ソーヴィニオンも飲んでみない?前のオーナーが植えていたんだよ」と、ロゼワインを注いでくれた。綺麗なルビー色。4、5時間のスキンコンタクトでロゼワインにしているとのこと。ダークベリーやチェリーの香りに赤い花の香り。ジューシーな果実味はフレッシュでスッキリとした味わい。どんどん飲めそう。
いや、飲んだ飲んだ。それにしても、Helmutさんの造るワインは透明感があり活き活きとしている。それでいて複雑さも感じられ、深みがある。じっくりと飲むと、時間とともに深みが増していくのが分かる。ブドウを出来るだけ熟させる遅摘みの収穫や、自然酵母による醸造など、豊富な経験に裏付けられた知見や努力の結晶なんだろうなと思う。素晴らしい畑にアルテレーベンの良いブドウを持つHelmutさんが、惜しみなく知見と労力を注ぎ込むこのワイナリー、これからも要注目!

Weingut VOLS

試飲したワイン
NV  VOLS Grand Rosé brut
2022 VOLS SAAR Riesling trocken
2021 Wiltinger Riesling trocken
2020 Ayler Kupp Riesling trocken Großes Gewächs
2020 Schlangengraben Riesling trocken Großes Gewächs
2022 Schlangengraben Riesling Kabinett feinherb
2022 VOLS SAAR Riesling feinherb
2022 Wiltinger Riesling Kabinett
2022 Ayler Riesling Kabinett
2010 Ayler Riesling Auslese
2022 Cabernet Sauvignon CLARETE

畑面積:8.5ha
生産量:40,000本/年
上級畑:Wiltinger Braunfels、Wiltinger Schlangengraben、Ayler Kupp
土壌:WB/灰色粘板岩・珪岩を含む灰色岩・赤色粘板岩、WS/赤色粘板岩、AK/青色粘板岩・灰色粘板岩
栽培種:84%リースリング、7%ヴァイスブルグンダー、6%シュペートブルグンダー、3%ソーヴィニオンブラン

フォルス醸造所ホームページ

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