Weingut Max Schell

Frau Katarina Schulze-Icking von Weingut Max Schell
Katarinaさん

2023年8月15日(火)
アールヴァイラーから国道267号線を西に向かう。この道路はアール川沿いを走っており、この先ヴァルポルツハイム、マリエンタール、デルナウ、レッヒ、マイショス、アルテンアールといったアールワインの銘醸地を結んでいる。さしづめ、アールのワイン街道といったところだ。それにしても、車を走らせていると目に止まるのは、2021年の洪水の爪痕だ。下部がえぐり取られたままのブドウ畑、壊れたままの建物などなど。これから訪れるMax Schellも、2020年ヴィンテージのほぼ全てのワインを失うとともに、所有するブドウの木の3分の1を失った。しっかりと復活していると聞いているが、心配だ。レッヒ村に入ると、程なく道路沿いに可愛らしい白い建物が見えてきた。赤い文字でMax Schellと書いてある。うん、ここここと車を止めた。入り口の扉を開けると、お約束をしていたKatarinaさんが明るい笑顔で迎えてくれた。
Weingut Max Schellは1949年創業。現在の当主Wolfgang Schulze-Ickingさんは3代目だ。創業者はMax Schellさん。伝統的なブドウ栽培に専念し、ワイナリーの基礎を築いた。2代目は、Maxさんの娘婿のBernhard Schulze-Ickingさん。元々は酪農家であったBernhardさんだが、Maxさんのワイン造りを引き継ぎ、新技術の導入と拡張に努めた。そして今、修行を積んだ醸造家であるWolfgangさんと、有名ホテルでマネージャー及びワインコンサルタントの経験を持つKatarinaさんが、このワイナリーを取り仕切っている。そのワインは、Bernhardさんの深い知見やノウハウと、Wolfgangさんの新たな知識が融合し、高い評価を得ている。

Weingut Max Schell

さて、何から飲もうか。赤ワインが目当てだけど白も気になると思っていたら、「これはベーシックなワイン。ステンレスタンクで発酵しているの」と、Katarinaさんがすかさずリースリングを注いでくれた。うん、フレッシュ。酸も効いていて美味しい。すると、「ファインヘルプだけど、こっちも飲んでみて。ステンレスタンク発酵50%、バリック発酵50%なのよ」と、PULSAHRという名のリースリングを注いでくれる。おー、これ香りが豊か。ライム、桃、パイナップルの香りにスパイスのニュアンス。しっかりとした果実味に酸が尾を引く余韻。いや、美味しい。「折角なので、グラウブルグンダーも飲んでみる?」とKatarinaさん。これもフレッシュ。そしてフルーティーな香り。続いてヴァイスブルグンダーも飲んだら、と注いでくれる。いや、こりゃありがたい。柑橘系のいい香り。そしてフレッシュな味わい。どのワインも素直でナチュラルな味わいで、手間暇をかけたブドウの栽培と丁寧なワイン造りをしていることが感じられる。それにしても、こんなに次々と試飲させてくれるKatarinaさんのサービス精神はとっても素晴らしい。
ここまで白ワインを飲んだからには、やはり白の締めとしてシュペートブルグンダーのブラン・ド・ノワールを飲まねばなるまい。お願いすると、Katarinaさんは「喜んで!」と注いでくれる。うん、ラズベリーやチェリーの香りが豊か。それに酸味がしっかりしているのも良い。
「では、次はシュペートブルグンダーのロゼをどうぞ。ステンレスタンク発酵で、フレッシュなワインよ」と、綺麗なサーモンピンクのワインを注いでくれる。チェリーやベリーの良い香りがする。そして、確かにフレッシュ。スムーズで透明感のある果実味。すると、「こちらはカジュアルなロゼで人気があるのよ。ポルトギーザーで造っているの」と別のロゼを注いでくれる。あー、これグイグイいける。フレッシュかつフルーティー。そして何といっても軽やか。みんなでワイワイと飲むにはうってつけのやつだ。
さて、いよいよ赤。「まずはシュペートブルグンダーのベーシックなものをどうぞ」とKatarinaさん。イチゴやブルーベリーの良い香り。そしてしっかりとした素直な果実味。「次も美味しいわよ。フレンチオークのバリックで12ヶ月熟成しているの」と、先ほどのリースリングと同じPULSAHRの名を冠したシュペートブルグンダーを注いでくれた。うん、ブルーベリー、ラズベリーの良い香り。ミントやハーブのニュアンスがある。口の含むと滑らかな舌触り。まろやかな果実味に生き生きとした酸。確かに美味しい。
「これは樹齢40年以上のアルテ・レーベンよ。ヴァルポルツハイムのファッフェンベルクという畑で栽培しているの。アメリカン・オークのバリックで1年間の熟成よ」と、今度はフリューブルグンダーを注いでくれる。ブラックベリー、ダークベリーの良い香り。とても円やかな口当たりできめ細かなタンニン。濃縮した果実味に程よい酸。フリューブルグンダーはシュペートブルグンダーよりも早摘みなので、つい軽いイメージを持ってしまいがちだが、しっかりとした熟成感がある。

Keller von Weingut Max Schell

試飲もいよいよクライマックス。残すはシュペートブルグンダーの上級ワイン。「これはアールヴァイラーの単一畑、ローゼンタルのブドウで造ったワインよ。古いオーク樽で2、3ヶ月醸造したあと、新しいバリックで21ヶ月熟成させているの」
ああ、こりゃまたいい香り。ストロベリー、ラズベリー、チェリーといった赤い果物の香りにスパイスのニュアンス。それにチョコレート。とても優しい口当たりで濃縮した果実味が滑らかに拡がる。これに生き生きとした酸が溶け込んでいる。そして長い余韻。ホント、美味しい。
「次はジルバーベルクのワイン。粘板岩土壌のとても良い畑なのよ。225リットルと500リットルのオーク樽で12ヶ月熟成よ」
あ、これスパイシーな香り。ストロベリー、ラズベリー、チェリー。ミントのようなハーブの香り。口に含むと、滑らかな口当たりエレガントな果実味。そして意外にも超辛口!余韻は長く酸味とミネラル感がある。それにしても、この辛口はクセになる美味しさかも。辛さ(糖分の量)やキャラクターは醸造法の違いにもよるところが大きいと思うが、レス土壌のローゼンタルと粘板岩土壌のジルバーベルクの違いも感じられ、興味深い。
「最後は、このGRAND MAX “S”をどうぞ。畑はローゼンタル。古いオーク樽で発酵して、新しいバリックで22ヶ月熟成させているの」
うーん、色々な香りがする。ストロベリー、ラズベリーといったベリー類、プラム、バラ、コーヒー、チョコレート、土のような香り。スパイスのニュアンスも。口に含むと円やかな口当たりに濃厚な果実味。酸がよく溶け込んでいる。いや、美味しい。
それにしても、沢山飲ませて頂いたなぁ。Katarinaさんには大感謝だ。そして、これだけ飲んだからこそ分かるのは、白も赤も関係なく、一貫して共通するMax Schellワインの特徴だ。それは、ブドウの力をとてもよく引き出していること。そして、あらゆる要素がとても良いバランスで活かされていることだ。これ、ブドウ栽培から醸造までのあらゆるプロセスで細心の注意を払うとともに、醸造家のセンスの良さがないと出来ないことだ。このワイナリーには、それがある。この素晴らしい技を是非、継承、発展して貰いたいなぁと思っていたら、娘さんのAnnikaさんが、この春、ガイゼンハイム大学のブドウ栽培とワイン醸造の学士号を取得したとの報に接した。Max Schellの家族をあげてのワイン造りの道、まだまだ続きそうだ。

Weingut Max Schell

試飲したワイン
2022 Ahr Riesling trocken
2021 PULSAHR Riesling feinherb
2022 Grauburgunder trocken
2022 Ahr Weißburgunder feinherb
2022 Ahr Spätburgunder Blanc de Noir trocken
2022 Ahr Spätburgunder Rosé trocken
NV Hausmarke Rosé trocken
2021 Ahr Spätburgunder “TRADITION” trocken
2021 PULSAHR Spätburgunder trocken
2021 Ahr Frühburgunder “Arte Reben” trocken
2021 GRAND MAX Spätburgunder trocken
2021 Ahrweiler Silberberg Spätburgunder trocken
2020 GRAND MAX “S” Spätburgunder trocken

畑面積:4ha
生産量:30,000本/年
上級畑:Mayschoßer Mönchberg、Recher Herrenberg、Ahrweiler Rosenthal、Ahrweiler Silberberg、Neuenahrer Sonnenberg
土壌:MM/風化層を含む黒色粘板岩・灰色岩、RH/レス・レスレーム・灰色岩、AR/風化粘板岩、AS/レスレーム・灰色岩、NS/レス・レスレーム・灰色岩・粘板岩
栽培種:72%シュペートブルグンダー、20%フリューブルグンダー、6%リースリング、2%ポルトギーザー

マックス・シェル醸造所ホームページ

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