Maibachfarm

Maibachfarm Kellermeister Herr Alexander Weber
Weberさん

2023年8月14日(月)
アールヴァイラーの街から車で南に向かうと、すぐに山の裾野に建つカルヴァリエンベルク修道院が見えてくる。18世紀に建てられたバロック様式のこの修道院、とにかく壮大。目を奪われつつも、その脇を通る山道を登っていく。一本道を登っていくこと約5分、道の終点であるMaibachfarmの門に辿り着いた。マイバッハ渓谷に位置する、森の中の開けた場所。車を降りると、のどかな空気と自然の音だけの心地良い静寂が感じられる。門から中に入っていくと、いくつかの建物が見える。倉庫、オフィスがある建物、レストラン施設などなど。小さな葡萄畑もある。オフィスに人影が見えたので声をかけると、「ああ、約束してた人だね」と、試飲スペースがある建物に案内してくれた。そして、白い壁の明るい試飲スペースで待っていると、「やあ!ようこそ」と、ケラーマイスター(醸造責任者)のAlexander Weberさんがやってきた。
Maibachfarmは、1998年創設。元々この地には、遠足で来た人のためのパブと、鶏や牛が飼育されている農場があった。新しいオーナーは、この地でワイン造りをやろうと決めていたが、この地の歴史に敬意を表してワイナリーの名前をMaibachfarmにしたとのこと。創業当初から有機栽培にこだわったブドウ作りを目指し、多くの自然な土地改良策を積み重ねてきた。アールでは数少ない有機農業実践者だ。また、最新の醸造技術の導入を続けており、そのワインは、常に高い評価を得ている。そのワイン造りを支えるのが、2013年にケラーマイスターに着任したWeberさんだ。
「さて、何から行こうか?」とWeberさん。赤ワインの名産地だからこそ気になる白、シュペートブルグンダーのブラン・ド・ノワールをお願いした。お、豊かな香り。桃、ラズベリー、イチゴなど。口に含むと、とても滑らかな口当たり。フレッシュかつジューシー。しっかりとした味わいとミネラル感。そして何より、とてもピュアな感じがする。いや、美味しい。
「ロゼは如何?ピノ・ノワール、ピノ・マドレーヌ、レゲントで造ったんだ」
うーん、これも滑らかでジューシー。カシス、ラズベリー、イチゴなど、しっかりと黒ブドウの香りがする。まろやかな果実味と程よい酸味が良い。
「白に戻るけれど、これ飲んでみて」と出してくれたのは、シャルドネとグラウブルグンダーで造ったワイン。おっ、これ力強い香り。樽由来の木の香り、ハーブ、洋梨、白い花の香り。口に含むと円やかな舌触り。骨格があるしっかりとした果実味に酸が効いている。これ、なかなかの美味しさ。「これはアールヴァイラー・ローゼンベルクのシャルドネとグラウブルグンダーが50%づつで、10ヶ月バリックで熟成しているんだ」とWeberさん。やはり、良いブドウで作ったワインには、相応の力強さがあるんだなと実感する。

Spätburgunder Klone

「では赤に行こうか。まずはベーシックなやつから」と、注いでくれたのはシュペートブルグンダー。うーん、いい香り。ダークチェリー、ブラックベリー、ブルーベリー、イチゴ、木の香りにハーブのニュアンス。滑らかな口当たり。そしてこの果実味、透明感があり素直でとてもいい感じ。Weberさんが、4から8年の古いフレンチバリックで18ヶ月熟成させていると教えてくれた。次はアールヴァイラーのシュペートブルグンダー。これもいい香り。ブラックチェリー、ブラックベリー、ラズベリー、ハーブ、木の香り。草木のニュアンスがある。口に含むと、とても柔らかな口当たり。力強い果実味にスパイス感がある。そして程良い苦味。「このブドウの畑はレスレーム土壌だよ。新ダルと古いタルで18ヶ月熟成しているんだ」とWeberさん。
「同じように醸造しているけれど、こちらは粘板岩土壌のものだから、また違う味わいだよ」と出してくれたのは、デルナウアーのシュペートブルグンダー。おー、これ、なんというか、深みがあるなぁ。ダークチェリーやブラックベリーの香りもより熟した感じ。木の香りに煙のニュアンス。土のような香りも。滑らかで円やかな口当たり。しっかりとした果実味に程よく酸が溶け込んでいる。程よい苦味とミネラル感を感じる。いや、土壌が違うとワインもガラッと違ってくるから面白い。
そしていよいよ上級畑のワイン。まずはヘレンベルクのシュペートブルグンダー。「この畑は粘板岩とローム層なんだ。うちの畑には樹齢50年以上の古樹もあるんだよ」
香りを嗅いでみると、樽からくる木の香りが果実の香りやスパイスの香りととても良く調和している。ダークチェリー、カシス、そしてハーブ。口に含むと、完熟した穏やかな果実味。しっかりとしたボディに優しい酸が感じられる。ステンレス樽で8ヶ月醸造した後、フレンチオークの新樽で20から21ヶ月熟成させるとのこと。いや、これ、じわじわっと美味しさが伝わってくるワインだなあ。
次はブルクガルテンのシュペートブルグンダー。「この畑は玄武岩があるからね。火成岩特有の味わいがあると思うよ」
ああ、これ香りが強い。ブラックベリー、スパイス、そしてコーヒーの様な香り。口に含むと柔らかな舌触り。完熟した果実味は力強く、複雑さを感じる。そして苦味。ヘレンベルクと同様に上質さを感じるが、また別の特徴がある。
「次はテラッセンラーゲのシュペートブルグンダーをどうぞ。ここは風化した粘板岩。砂質や岩が多いんだ」
うん、これも樽からくる木の香りとブラックチェリーといった果実味の調和が素晴らしい。ハーブやスパイスの香りもする。飲んでみると、これ、まろやか。溶け込んだ酸味が心地良い。そして、ミネラル感が特徴的。「テラッセンラーゲはヴァルポルツハイム村の急斜面の段々畑で、このワインは、その中の単一畑であるアルテ・レイ、ドムレイなどのブドウで造っているんだ。だけど、2017年にドムレイが廃棄されて一部がアルテ・レイに編入されたりしたんで、2018年からは、テラッセンラーゲの名称はアルテ・レイに変わるんだよ」
おー、じゃこの2017年のワイン、最後のテラッセンラーゲってことになる。貴重かも。
「もう1本、ジルバーベルクのシュペートブルグンダーをどうぞ。ここは風化した粘板岩とレスの土壌だよ」
うん、これも良い香り。カシス、ブラックチェリー、コーヒーにスパイス。飲んでみると、おぉ!これ、なんというか、エレガント。とても滑らかな口当たりで、素直に美味しい。完熟した果実味は深くコクがあり、程良い酸味にミネラルを感じる。いや、ホント幸せ。

試飲を終え外に出ると、Weberさんが、様々なクローンのブドウを植えてある小さな畑を見せてくれた。「例えばシュペートブルグンダーでも、ドイツクローンのものやフランスクローンのものなど、ガイゼンハイム大学と協力して色々な種類を試しているんだ」
なるほど。Weberさんはブドウの研究にも余念が無い。それにしても、ガイゼンハイム大学って、本当にドイツのワイン関係者コミュニティの結節点になっているなぁ。まあ、Weberさんもそうだが、今のドイツワインの造り手たちは、ほぼほぼガイゼンハイム大学で学んでいる。ガイゼンハイムを通じて、世代を超えたネットワークができていると共に、ガイゼンハイムから、様々な科学的知見がコミュニティに供給されている。いや、これって大学の在り方の理想だと思う。
そして、ケラーのを見せてもらう。綺麗に整頓されたケラーは、温度管理ができるステンレスタンクが整備され、バリックが整然と並んでいる。自然酵母による発酵で、ステンレスタンクやバリックでの熟成中は、ワインと酵母をずっと触れさせているとのこと。このワインと酵母の関係は、美味しいワイン造りのとても重要なポイントに違いない。いや、このワイナリー、自然の力を最大限に利用するとともに、科学的知見を貪欲に取り込んでいる。そして、それが良いワインに上手く結実している。Weberさんを中心としたチームが、そのワインをどのように発展させていくのか、本当に楽しみ!

Maibachfarm

試飲したワイン
2021 Spätburgunder Blanc de Noir trocken
2022 Rosé trocken
2021 Ahrweiler Grauburgunder & Chardonnay trocken
2021 Spätburgunder Qualitätswein trocken
2020 Ahrweiler Spätburgunder trocken
2020 Dernauer Spätburgunder trocken
2017 Herrenberg Spätburgunder trocken
2017 Burggarten Spätburgunder trocken
2017 Spätburgunder Terrassenlage trocken
2017 Silberberg Spätburgunder trocken

畑面積:9ha
生産量:40,000本/年
上級畑:Ahrweiler Silberberg、Ahrweiler Rosenthal、Heimersheimer Burggarten、Recher Herrenberg、Walporzheimer Alte Lay
土壌:AS/レスレーム・灰色岩、AR/風化粘板岩、HB/玄武岩、RH/レス・レスレーム・灰色岩、WAL/風化物粘板岩・レーム質灰色岩・砂質レーム
栽培種:70%シュペートブルグンダー、10%フリューブルグンダー、7.5%グラウブルグンダー、7.5%ヴァイスブルグンダー、5%その他
BIO

マイバッハファーム醸造所ホームページ

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