Weingut Bernhard Koch
2019年9月12日(木)
南部プファルツ。綺麗な街並みでワイン造りが盛んな村、ハインフェルド。”Weinort in Barock”と呼ばれている。この村の目抜き通りであるワイン通り(Weinstraße)を南に進むと、ほぼ村の南端のところで東西に走る国道507号線とぶつかる。交差点を右折すると、この道もワイン通り。ワイン通りは、国道507号線に引き継がれて続く。そしてすぐ、右手にBernhard Kochの看板が見えた。
車を降りると、明るい色をしたレンガ造りの建物が2つ並んでいる。その建物と建物の間に、Weingut Kochの文字が掲げられている鉄製の門扉。門は開いており、門の前の立て看板に「本日、ワインの試飲と購入やってます」と書いてある。ここここと、門から中に入っていくと、どうやら、左側の建物に試飲・販売スペースがあるようだ。ステップを上がり、やや高い位置にある扉の横の呼び鈴を押すと、販売担当のMario Dannerさんが笑顔で迎えてくれた。
Koch家のワイン造りは、1610年まで遡ることができる。いや、古い。ドイツには歴史あるワイナリーは多いのだが、ドイツが主戦場となった30年戦争(1618〜1648)以前から続いているところは、なかなか無い。現当主のBernhardさんは、1987年にお父さんからワイナリーを引き継いだ。5ヘクタールの畑に小さな醸造施設を持つワイナリーだったとのこと。その後、奥様のChristineさんとともに畑の拡充とワインの品質向上に努め、Bernhard Kochはリーズナブルな高品質ワインの作り手として評価を高めていった。畑の拡充に伴い、1998年以降、新しい醸造施設も整備。2000年代に入ると、有名なワインコンサルタント、H. E. Dausch氏をアドバイザーに迎え、ワインのラインナップの整理と更なる高品質化が推し進められた。Dausch氏はその後去ったが、今や、Bernhard Kochは、50ヘクタールの畑から、エントリーレベルから高級なものまで、幅広く高品質ワインを造る誰もが認めるワイナリーだ。
さて、中に入ると、そこはちょっと山小屋風のスペース。白い壁に、木製の柱。天井には、木製の梁が平行に並んでいる。明るい茶色の木製のテーブルと椅子のセットが並んでおり、Marioさんは、そのうちの一つに案内してくれる。
「ようこそ。どんなワインを試したいかな?」と、Marioさんはワインリストを説明してくれる。まず、グーツワインの充実ぶりに目をみはった。リースリングだけで5種類ある。その他のブドウ種も、ブルグンダー種を中心にたくさん揃っている。5〜7ユーロの価格帯を中心に、10ユーロ以下のワインがよりどりみどりすぎて嬉しくなる。ロゼや赤ワインも同様。ドルンフェルダーやシュペートブルグンダー、カベルネ・ドルサなどのリーズナブルなワインが目白押し。上級ワインは、レゼルブと特に良い収穫が出来た年にだけ造るグランド・レゼルブのシリーズがある。また、特にバリックで仕込む上級のシュペートブルグンダーワインは、プレミアムとしてラインナップされている。
いや、本当に目移りするが、まずは充実しているリースリングをいただくことにした。最初はグーツワインから。グラニット(花崗岩)と名付けられたトロッケン。火成岩土壌ってのが気になり、思わず頼んでしまった。
「これはミシェルズベルクという畑のブドウなんだ。ハインフェルドの少し西からプファルツの森まで続く広い区画だけど、ハインフェルドのあたりから続く大きな花崗岩の層があるんだ」とMarioさん。うん、鼻に抜ける香りが特徴的。グレープフルーツや洋ナシの香り。飲んでみると、果実の凝縮感が感じられ力強い。長い余韻の酸味とミネラル感が心地良い。
次はレゼルブシリーズのリースリング、レッテン。柑橘系の良い香り。飲んでみる。おー、超辛口!柔らかな口当たりに適度な酸の刺激。完熟感のある味わいにしっかりとした骨格を感じる。後味のミネラル感も良い感じ。
「レッテンは、ここハインフェルドの畑で街のすぐ北側にあるんだ。石灰岩が豊富でそれがミネラルをもたらしているんだよ」と、Marioさんは、同じくレッテンのグラウブルグンダーを注いでくれる。まず、特徴的な香辛料の香り。そして洋ナシやリンゴの香り、ナッツのノート。とても柔らかな口当たり。熟した果実味に良い感じの苦味。いや、美味しいなあ。こりゃきちんと白ワインを飲まねばという気になってきた。
ということで、レゼルブシリーズのヴァイスブルグンダーをお願いする。アプリコットや柑橘系の果実の香り。花の香りも。いやあ、なんだか華やか。そして柔らかい口当たりに果実味が優しく拡がる。ハインフェルドの南にあるヴァルスハイム村のジルバーベルクという畑からのもので、石灰を多く含む土壌とのこと。
そしてシャルドネ。メロンや柑橘系の香り。ボリューム感があり、力強い味わい。酸味があり、しっかりとした骨格を感じる。いや、よく熟してるわ。そして後味にミネラル感。Marioさんは、「これはローゼンガルテンという畑からのもの。プファルツで最も古い畑で、石灰質を多く含む土壌なんだ」と教えてくれる。
こう飲んでくると、どのワインも味わいが力強い。同時に、様々な香りや味わいが交錯する繊細な複雑さを備えている。そして、いずれもそれぞれに特徴があり、ブドウや土壌の特徴をよく現しているなあと思う。Bernhard Kochは、実はシュペートブルグンダーの評価が高くそちらも頂きたかったのだが、すっかり白ワインを堪能したので、赤ワインは今度来た時ということにした。
ところで、Bernhard Kochでは若い力が躍進している。Bernhardさんの長男Alexanderさんは、KnipserやDr. Hegerでの修業とガイゼンハイムでの学びを経て、2018年からBernhardさんとともにワイナリーの運営責任者を務めている。そのAlexanderさんは、2019年に開催されたプファルツの若手醸造家のコンテストで1位になった。いや、なんとも頼もしい。また、弟のKonstantinさんはハイルボルンでワインに関する経営管理を学び、ワイナリーの経営に参画したところだ。そして、2013年からケラーマイスタリンを務めているのは日本人の坂田千枝さん。このワイナリー、これからどのように発展していくのか、本当に楽しみ!
試飲したワイン
2018 Riesling Granit trocken
2018 Riesling „Letten“ Réserve
2018 Grauburgunder „Letten“ Réserve
2018 Weißburgunder „Silberberg“ Réserve
2017 Chardonnay Rosengarten
畑面積:50ha
生産量:450,000本/年
上級畑:Hainfelder Letten、Hainfelder Kapelle、Hainfelder Kirchenstück、Rhodter Rosengarten、Weyherer Michelsberg
土壌:レス(黄土)、レーム、石灰質凝灰岩、雑色砂岩、WM/花崗岩、レス(黄土)、レーム
栽培種:26%リースリング、19%シュペートブルグンダー、15%グラウブルグンダー、12%ヴァイスブルグンダー、6%シャルドネ、5%シュヴァルツリースリング、4%ソーヴィニヨン・ブラン、3%ショイレーベ、10%その他