Weingut Kees-Kieren
2019年9月9日(月)
モーゼル川中流域、ベルンカステルに程近いこの辺りでは、国道53号線がモーゼル川とブドウ畑の丘に挟まれるように走っている。グラーハは、その国道53号線沿い、ブドウ畑の丘の麓にある小さな村だ。国道53号線から一つ内側のハウプト通りに入ると、程なく道路に面した真っ白な壁のKees-Kierenの建物が見えた。一つの建物だが、大きく3つに別れており、正面は車も入れる作業のスペース、右手はおそらく住居兼ゲストハウス、そして左手はヴィノテーク(ワインショップ)となっている。
車を降り、ヴィノテークに入ってみる。が、誰もいない。うろうろしながらハローって言ってみると、奥の事務所らしきところから「ちょっと待ってってね!」の声。忙しそうだ。ヴィノテークの中を見ながら数分待ったところで、当主の一人、Ernst-Josefさんが現れた。
Kees-Kierenは、Ernst-JosefさんとWernerさんのKees兄弟が当主を務める、歴史あるワイナリーだ。何と、1648年の文書に既にKees家のブドウ栽培が言及されているとのこと。いや、参りました。30年戦争が終わった年だよこりゃ。リースリングが本格的に普及していくのがその後くらいからだから、もう、ドイツワインの歴史を体現してきたと言っても過言でない。現当主のKees兄弟は、12代目として、1980年にワイナリーを引き継いだ。
「待たせたね。で、テイスティングするよね?お好みは?」と聞かれたので、リースリングの辛口をお願いする。
「では、まずはベーシックなものを」と、最初に注いでくれたのは定番のHochgewächs。
あっ、これいいわぁ。素直な果実味と酸味。骨格がしっかりしており、美味しいリースリング飲んでますって感じ。まさに定番。何にでも合わせられそう。Ernst-Josefさんは、そんな感想を笑顔で聞いている。
「次は地元のグランクリュ畑、Graacher Domprobstのワインをどうぞ」と、カビネトロッケン。
これも美味しいなあ。同じく素直な果実味。長い余韻の後半のミネラル感がいい感じ。全体としてとてもバランスが取れているワインだ。
次は同じ畑のシュペートレーゼ。いや、これも果実味がいい感じ。完熟感があり、味が濃く感じる。何となく、豊かで素直な果実味がKees-Kierenの特徴かなと考える。
「気に入った?じゃあ、これも是非味わってもらいたいな」と、またもや同じ畑、Graacher DomprobstのGGを注いでくれる。それにしても、すごいなこのDomprobst押し。Ernst-Josefさんの地元グラーハ愛、全くどんだけだよ。
さてGG。香りにハーブのニュアンスを感じる。口に含んでみると、おおっ!すごい果実の凝縮感。なんというか、ふくよかな感じ。果実味とともに、塩味や、いい意味での苦味を感じる。美味しい。さすが州の金賞ワイン。
ところで、Kees-Kierenは賞に事欠かない。2019年には26回目の州栄誉賞を受賞。VINUM誌のリースリング・チャンピオン2018では1位を獲得している。Ernst-JosefさんとWernerさんがワイナリーを継いで40年。いやあ、本当にすごい努力をしてきたんだろうなと思う。高品質のワインを長年にわたり造り続けるのって、大変なことだ。ぶれずに、気候と土とブドウ樹に向き合い、手作業と自然に委ねた作業に徹する。気のせいか、Ernst-Josefさんに後光が差しているように見えた。いや、まじで。
試飲したワイン
2018 Riesling Hochgewächs trocken
2017 Graacher Domprobst Kabinett Riesling trocken
2018 Graacher Domprobst Spätlese Riesling -S- trocken
2017 Graacher Domprobst Riesling Großes Gewächs
畑面積:6.5ha
生産量:50,000本/年
上級畑:Graacher Himmelreich、Graacher Domprobst、Erdener Treppchen、Kinheimer Rosenberg、Kinheimer Hubertuslay、Kestener Paulinshofberg
土壌:粘板岩
栽培種:90%リースリング、5%シュペートブルグンダー、3%ミュラー・トゥルガウ、2%ヴァイスブルグンダー